第20回(2023年度)ジェンダー史学会年次大会のお知らせ

2023年10月14日

第20回ジェンダー史学会年次大会は、下記の要領で実施いたします。
日時:2023年12月10日(日)
 10:00~11:30 自由論題 (会員向け、対面参加のみ)
 12:30~13:15 総会 (会員向け、対面参加のみ) 
 13:30~17:30 シンポジウム「宗教とジェンダー:「主体的」実践としての信仰を問い直す」
        (非会員も参加可、対面とウェビナーのハイブリッド実施予定)
場所:奈良女子大学
*参加登録は、こちらからお願いします。
 

大会プログラム
日時:2023年12月10日(日)
会場:奈良女子大学

受付開始 9時30分〜


部会A 10時~12時15分 司会 平井和子
パネル「敗戦・被占領と日本社会の再秩序化―神崎清コレクションから見えてくるもの―」
報告者:加藤千香子, ファンデルドゥース瑠璃, 真辺駿, 松永健聖, 齋藤葵, 黒岩漠, 平井和子  

部会B  10時~12時15分 司会 小田原琳
・仲松優子「18世紀ラングドック地方における絹糸生産と女性労働」
・門間卓也「第二次大戦下ユーゴスラヴィアの女性たちの「民族共同体」」
・上尾さと子「中国残留邦人永住帰国者の高齢者問題とジェンダー」
・中澤登水子「国際刑事司法におけるジェンダーに基づく迫害・国際刑事裁判所検察局による規定の解釈」 
 
部会C  10時~11時40分 司会 前川直哉
・星乃治彦「明治期「男の契り」の諸相」
・福永玄弥「東アジアにおける宗教右派とジェンダー・バックラッシュ:台湾と韓国のプロテスタント右派による反同性愛運動を中心に」
・洲崎圭子「言語の間隙でクィアを実践することーシルビア・モロイと南北アメリカ社会」


部会D  10時~11時40分 司会 嶽本新奈
・江口布由子「1890年代―1920年代のオーストリアにおける女性運動とセクシュアリティードイツ語メディアを中心に」
・(報告辞退)山家悠平「「社会観察」から「劣悪文学」へ:和田芳子『遊女物語』(1913)と娼婦名義出版の流行をめぐって」
・佐藤雅哉「生殖権と新自由主義――レーガン政権期におけるメキシコシティ政策の策定過程に注目して」


部会E  10時~11時40分 司会 小玉亮子
・片桐真佐子「ジェンダーの視点から見た、日本のキルト文化における「日本キルターズ協会」の位置づけと歴史的意義について」
・崔誠姫「学籍簿資料からみる植民地期朝鮮の女子中等教育―大邱女子高等普通学校を中心に―」
・(報告辞退)陣内恵梨「神功皇后図像の再検証――「前線の女統帥」から「銃後の母親像」への転換―」

総会 12時30分~13時15分

シンポジウム  13時30分~17時30分  (文学部S棟235教室)

「宗教とジェンダー―「主体的」実践としての信仰を問い直す」

報告者:神山美奈子(名古屋学院大学)  
  「韓国プロテスタント史における「主体」とフェミニスト神学の動向」
後藤絵美(東京外国語大学)  
  「ジェンダー平等を求めて―近現代におけるムスリム女性の宗教改革運動とその核心」
工藤万里江(立教大学ほか非常勤講師)  
  「「神学」は抵抗実践となりうるか―フェミニスト神学とクィア神学」
コメンテーター:中野智世(成城大学)
野村育世(日本中世史研究者)
司会:石井香江(同志社大学)

趣旨説明
 2013年5月にフランスで同性婚合法化法が成立したが、その前後に宗教右派が中心となり、フランスでは主に同性婚合法化に、ドイツでは性的マイノリティについて理解を深める性教育の導入に反対するデモが全国規模で実施された。アメリカ合衆国においても、宗教右派が中心となり反中絶運動を推し進めるなか、2022年6月にはドブス判決が下された。この判決は、人工妊娠中絶を憲法上の権利として保護すべきとする1973年のロウ対ウェイド判決を覆すもので、国内外に衝撃を与えた。昨年以来、日本でも宗教と政治の関係が注目され、夫婦別姓や同性婚に反対する政治家たちのジェンダー・家族観に、宗教が少なからぬ影響を与えている事実が浮かび上がった。
 このように、宗教は「伝統的」なジェンダー秩序の形成と深く関わっており、近代的なジェンダー・家族観と相いれないという理解が一般的ではないだろうか。事実、多くの宗教/信仰で、儀礼や組織への参画を制約されてきたのは、男性ではなく女性であった。ジェンダー研究の影響を受けた近年の宗教研究を俯瞰してみても、現存のジェンダー秩序を再生産する、宗教のもつジェンダー差別的な側面が注目されるようになっていることが明らかとなる。もちろんこの動きは、宗教研究にとって重要な進展であるといえようが、そこで見落とされうることもある。それは、男性のみならず女性もが、ジェンダー差別を内包する宗教に帰依し、熱心な信者となるだけでなく、時には出家し、聖職者や聖人にさえなったのはなぜなのかという視点である。それは、「行為主体」(エージェンシー)として自ら選択をしたからなのか、あるいは、「狂信」に突き動かされたり、「洗脳」されたりしたからなのか。「主体的」実践としての信仰という側面だけではなく、主体の行動を制約しうる構造(社会・宗教・家族内部の力関係)とのせめぎあいにも、注意を払わなければならないだろう。
 本シンポジウムでは以上のような問題意識を踏まえ、時代と地域を超えた、近年の歴史学、地域研究、神学などの幅広い学問領域の成果をもとに、信者や聖職者としての宗教実践について、ジェンダーの視点から考察する。
 第一報告では、神山美奈子氏に、韓国プロテスタント史における「主体」とフェミニスト神学の動向について論じていただく。宣教の歴史、さらにその研究史からも排除された「女性」に注目し、このような状況を克服しようとする韓国フェミニスト神学の動向と最近の研究テーマを、日本との比較を交えて紹介する。
 第二報告では、後藤絵美氏に、近現代におけるムスリム女性の宗教改革運動について論じていただく。20世紀から21世紀にかけて、ジェンダー差別の解消に向けて、イスラームの聖典や法の再解釈に取り組んだ女性たちの言葉に着目し、女性たちはなぜ宗教の内側に留まり続けるのかという問いそのものについて考察する。
 第三報告では、工藤万里江氏に、家父長制と異性愛主義を深く内包するキリスト教の内部で、フェミニズムやクィアの視座からそれらに抵抗しようとする神学者たちに注目していただく。フェミニスト神学やクィア神学で展開される多様な試みを紐解くことで、「神学」は抵抗実践になりうるかという問いに迫る。
 以上の三報告に対し、近現代ドイツの福祉とキリスト教の観点から中野智世氏に、日本中世史・女性史と仏教の観点から野村育世氏にコメントを頂き、フロアを含めた広く活発な議論へとつなげていきたい。

※大会開催校からの注意事項
1)奈良の宿泊施設について
奈良は近年、外国人観光客の増加により、宿泊施設の確保が難しくなっています。早期の予約を願います。もし、近鉄奈良もしくはJR奈良で難しいようなら大和西大寺や近鉄大阪線も便利です。

2)学会での託児について
奈良女大には学会用の託児制度があります。生後3か月~小6までのお子さんが対象です。費用は1時間800円×時間+保育サポーターの交通費です。保育サポーターは本学の研修を受けた方です。経理上必要な「利用証明書」も発行可能です。希望者は11月30日までにayuko[a]cc.nara-wu.ac.jp([a]を@に)まで「託児希望」と題して連絡ください。なお、前日までのキャンセルは無料です。

*年次大会への参加登録は、こちらからお願いします。