設立趣意書

20世紀の最後の4半世紀に登場してきたジェンダー概念は、国際的にはいまや、学術研究の基軸的概念として、 21世紀の新たな知のパラダイム構築にかかわろうとしています。このたび私たちは、人類の歴史にかかわる諸学問領域をジェンダーの視点から深く研究するための学際的研究団体として、本学会の設立を企画致しました。

学際的研究団体としての私たちは、歴史・文学・言語・教育・宗教・思想・美術・音楽・演劇・経済・社会・民俗・政治・法・科学等々の諸分野を含み、学際的双方向性において、歴史におけるジェンダーの包括的研究を行うことをめざしています。すなわち、私たちは、ジェンダーを歴史という縦軸の重要な変数と位置づけ、ジェンダーがいかに構築されたのかというジェンダーの可変性とその特質さらにメカニズムにいたるまで、諸学問領域からアプローチし、総合的に解明したいと考えています。同時に、人種・民族、階級など他の諸要素とジェンダーとの諸関係を構造的に明らかにすることも重要な課題です。

また、私たちは、日本・アジア・アフリカ・欧米等々世界の諸地域をフィールドとして研究に従事しております。この地域という横軸を歴史という縦軸とクロスさせることにより、ジェンダー研究は、国際性ならびに地域性を合わせもち、比較史の視点からも課題の究明に取り組むことができると考えています。さらに私たちは、こうした研究成果を、義務教育や高等教育そして社会教育の場に十分還元し生かせるような試みも積極的に進めていきたいと思います。

私たちジェンダー史学会の活動は、国内外のジェンダー研究にかかわる諸学会・諸機関とも連携することで、学問研究の発展のみならず、人類社会の未来にも大きく寄与することができると信じます。

ジェンダー史学会設立の趣旨にご賛同いただける方々の積極的なご参加とご協力を、心よりお願い申し上げます。

2004年5月9日